留学経験者インタビュー:朝妻拓海さん
目次
- 観光への興味から、観光立国オーストラリアへ
留学生を積極採用する企業の意図が分かった - TOEICこそ正義という風潮は誤り
必要なのは英語で物事を円滑に進める能力 - 留学経験を強力な武器だと思わない方がいい
留学で何を得て何を活かせるのか考えることが必要
観光への興味から、観光立国オーストラリアへ
留学生を積極採用する企業の意図が分かった
— 留学したきっかけはなんですか?
朝妻さん:僕は2013年に留学したんですけど、一番の目的は、どうやったら外国人の旅行者を日本に引っ張ってこれるかっていうところにずっと興味があって、大学で研究とかもしてまして。
当時日本に来る観光客って800万人くらいだったんです。そういう中でどうやったら1,000万人まで増やせるのかって考えたときに、日本のマーケティングとかプロモーションが下手なんじゃないかという風に生意気ながら勝手に思ってました。
そんなとき、一番観光立国として有名なところってどこなんだろうって調べたら、オーストラリアだと。その中でもとくに観光の学問に力を入れている大学があったんで、そこに行こうかなと思ったのがきっかけですね。
— インバウンドのお客様を増やしていく為にどうやったら…、というので行かれたと。行ってどうでしたか?
朝妻さん:そうですね、最初から簡単じゃないなぁとは思ってましたけど、やっぱり最初はなかなか、慣れるのに必死で。
文化も違いますし、食べ物も違いますし、人も違いますし。やっぱり慣れるのに苦労しましたね。
— ボーディングスクール(寄宿制の学校)に入られたということですが、辛いことはありましたか?
朝妻さん:辛いことは、めちゃくちゃいっぱいあったんですよ。
日本の大学とオーストラリアの大学の一番違うところは、向こうの方がスキルとして直結しやすいっていうのがあります。
どういうことかっていうと、例えばマーケティングの授業一つをとっても、実際のケーススタディを元にして、答えのないものを授業で扱うんです。
「答えは○○です」っていう教育を受けてきたものからすると、正解がないものをどうやって導くのかとか、「なんであなたはそう思ったのか?」っていう問いに対する答えを絞り出して人に伝えるのに、すごく苦労しました。
–日本の大学に在学中はそのような教育システムではなかったのですか?
朝妻さん:そうですね。こう言っちゃなんですけど、比較的楽な感じというか、出せば単位をもらえるって感じだったんで。
逆に言うと、オーストラリアではエッセイを書くのでも、何冊も何十冊も論文を読んで、自分の論を論証するわけですよ。
そういう意味では、すごくハードワークだったなと思います。
–大学留学することによってもたらした効果はなんでしたか?
朝妻さん:帰国してからの危機意識がすごく高まりましたね。
帰ってきてから就職活動だったんですけど、留学していれば英語話せるし留学経験あるから採ってくれるのかなと思ったら、意外とそうじゃなくて。やっぱり日本だとまだ学歴とかで選ばれちゃうんですけど、向こうってスキルがないと入れなくて。
そういう意味で言うと、例えばソフトバンクとかユニクロとか積極的に留学生を採用してたんですけど、「あーなるほど、だから留学生を採用するのか」と。
なぜかというと、論理的に物事を考えられるし自分でこうした方がいいって意見を、留学生は日本の学生と比べて持ってるんで。
TOEICこそ正義という風潮は誤り
必要なのは英語で物事を円滑に進める能力
–朝妻さんの中で就労して留学経験を活かすとなったときに、語学力以外の能力で何を反映させたいと思いますか?
朝妻さん:率直に言うと行動力ですね。
僕は思い立ったらすぐ行動するタイプだったので、オーストラリアでもそれを活かして色んな事をやらせていただきました。
そういったところを日本の企業では活かせなかったなというのはありますね。
— その次の就労先というのはどこでしたか?
朝妻さん:実を言うと、もうその仕事を辞めて、自分で会社を設立しました。今は英会話のマンツーマンのスクールをやってます。
— 観光業界と今経営されている英会話スクールはちょっとジャンルが違う感もありますが、起業のきっかけとか背景にあるものはなんですか?
朝妻さん:帰ってきてから、日本人の英語力ってかなり低いなというのを改めて感じまして。
一つは、TOEICこそ正義というような風潮があるかと思ってまして。
私自身も色んなビジネスパーソンの方にお教えさせてもらってるので言うんですけど、TOEICは水戸黄門の印籠みたいなものじゃなくて。実際にそれを持っているから現地で「おぉー」ってなるかというと、ならないんです。
実際どういう能力が必要なのかというと、英語でコミュニケーションを取って物事を円滑に進める能力が必要なんであって。そういった英語教育を日本の義務教育では全く教えてくれてない、そういうところを教えるところがないなと思ったので、やろうと思ったのが一つ。
あとは、現地で僕が感じた、自分の意見を「なんでそう思うのか」と言うことが、なかなか向こうでも出来なかったので。そういう風に、「何故こうなるのか」って考えることを教えてくれるところがなかったので。
僕自身の経験を活かせて、英語でそういうことが伝えられる人を育てられたら、いろいろと活かせるんじゃないかなと、そういう人材を育てたいなと。
留学経験を強力な武器だと思わない方がいい
留学で何を得て何を活かせるのか考えることが必要
–留学経験者やこれから留学する方に、朝妻さんから何かメッセージをお願いします。
朝妻さん:やっぱり留学経験は強みだと思いますし、アドバンテージだと思うんですよ。でも、それをあまりにも強力な武器だと思わない方がいい、ということですね。
なぜかというと、留学って言葉にするとしっかりしているけど、中身は色んな留学の形があると思うので。
例えば、留学に行ったといっても、現地の言語を使わないで日本人と交流とか、同じアジア圏の人と交流しても、それが帰って武器になるかというとならないわけで。
なので、実際に留学経験から帰ってきて、何を得て何を活かせるのかを考えるということ。
あとは、何かしら目的があって留学に行っていると思うので、企業選びの際にもどういう目的があってどんな仕事がやりたいのかを、自分の中で具体的に決めておく必要があります。
それは、留学したしてないは関係ないのですが、留学経験者は特にしっかり考えておいた方が、アドバンテージになるんじゃないかなと思います。