【世界で戦う日本人に聞く】新興国ビジネス論vol.1 – これからの時代に生き残る企業戦略

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.1 これからの時代に生き残る企業戦略

各国を渡り歩き、まさに前線で戦う日本人経営者や起業家の皆さんに、TIP TOP JOBの荒木隆がお話を伺うインタビューシリーズ、「世界で戦う日本人に聞く」。
今回から全4回に渡って「新興国ビジネス論」と題して、世界を股にかけて活躍する日本人経営者であり越境会代表の石田和靖さんにお話を伺います。
第1回のテーマは「これからの時代に生き残る企業戦略」。
到来したグローバル時代の中で、日本の企業はいかにして世界と戦っていくのか?日本企業が目指すべき姿とは?
世界を見てきた石田さんだからこそ分かる、日本企業の強みと弱点を徹底的に紐解いていきます。

新興国ビジネス論vol.1 – これからの時代に生き残る企業戦略

目次

海外でアクションを起こしたいメンバーが集まる、それが越境会

荒木:石田さんは現在はどのような活動を?
石田:主に二つありまして、一つは「越境会」という会を主催しております。これは約2,000人の海外志向の経営者が集まって、勉強会、交流会、海外視察、展示会、合宿など、さまざまな海外イベントを一緒にやっていくというものです。もう一つは「WorldInvestors.TV」という海外ビジネス・海外投資のメディアを運営しているのですが、それらを通していただく相談事を引き受けて、会社の顧問についたりコンサルティングや貿易を行ったりしています。

荒木:越境会に集まってくる経営者の方は、どういった方が多いですか?
石田:主に中小企業です。日本人がなかなか足を踏み入れていない、市場としてこれから成長してくるであろうところに向けて、何かビジネスを展開したい、販路拡大をしたい、留学をしたい、リタイア先としてどこどこの国に行きたい…。アプローチは様々ですが、とにかく海外で何かをやりたい経営者やビジネスマン、主婦や学生もいます。皆の共通項は、海外に目を向けていること。海外で何かアクションを起こしたいメンバーが集まっています。

荒木:時代ですよね。
石田:これからの時代、どんどん世界に目を向けて関係を作っていかないと、日本は埋もれてしまうんじゃないかと思います。

日本人だけでものを作る日本企業は世界で勝てない
多国籍な環境が新しいものを生み出す

荒木:今回のテーマは「これからの時代に生き残る企業戦略」ということで、企業として迎えるこれからの時代についてお伺いできますか?
石田:前提として、私自身は世界50ヵ国くらい回っています。そのほとんどが新興国、これから成長してくるような、アジア・中東・アフリカですね。それら国々の企業、政府、金融機関、大学等々、色んなところと関係を持って話を聞いてきた中で1つ言えることは、世界の企業は色んな国に目を向けているということ。外国人をどんどん採用したり、外国にどんどん商売を提案しにいったり、実際それで成長している企業、国がいっぱいあります。「あ、このままでは日本の企業絶対勝てないな」と、どこの国に行っても感じます。とくにアジア・中東・アフリカには、色んな国の色んな企業が進出してきているわけです。
例えば、ドバイのとある企業のとある部署、その部署のチームが10名体制で業務を行なっていたとしたら、10名全員が異なる国籍だったりします。アメリカ、レバノン、イギリス、エジプト、インド、中国…。

荒木:多国籍ということですね。
石田:そうです、それが当たり前の環境なんですね。その中で、新しいものをどんどん生み出すわけです。何故かというと、いろんなアイディアが注ぎ込まれて、様々な文化、宗教、生活習慣があって、その中で世界の他の地域では類を見ないものが新しく生まれてくるんです。そんな企業が、とにかく新興国には多いことを痛感して、日本人だけで1つのものを作っているというのは、これからやばいんじゃないかと。

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.1 石田和靖

インターネットの発達がビジネスのスピード感を大きく変えた
一晩にして億万長者が生まれるのが現代の新興国

荒木:日本というのは、もう新興国ではないですよね。
石田:先進国ですね。

荒木:でも、日本が新興国から先進国にまで成長する過程と、今現在の新興国の成長は、やり方や考えというのが少し違うのではというイメージを受けます。
石田:昔と今では状況がガラッと違うんです。その昔、日本が成長していた時代には、インターネットがなかったんですね。海外に行くにも航空券は今ほど安くない、お金を送金するのも今と違ってワンクリックではできない。要は、金融システムや航空機産業、インターネット、Eメールや携帯電話などの通信環境…、色んなものが今と昔で全然違うんです。昔日本が成長していた頃は、商社マンが風呂敷背負ってその風呂敷全部売ってくるっていう、ドブ板営業で結果が出ていた時代でした。

荒木:ジャパニーズビジネスマンですね。
石田:でも、今これだけインターネットが発達して、世界中が網目のように絡み合っている、情報もどんどん来る。そうすると、ビジネスのスピード感も昔の何百倍のスピードで、色んなビジネスが展開されていく。そんな時代になったときに、そのスピード感に追いつけないというのは、ちょっとやばいんじゃないかと。
そのスピード感を実践しているのが、まさに新興国なんです。今日と明日で街の景色が変わっちゃう、ビジネスの規模が変わっちゃう。ナイジェリアには「オーバーナイトビリオネア」という言葉があるんです。一言でいうと、一晩にして億万長者になっちゃう人のこと。そのくらい、ちゃぶ台をひっくり返すような勢いで、一晩で状況が変わっちゃう国々がとにかくいっぱいある。中国や韓国っていうのは、そこのビジネスチャンスに食らいついていってるわけです。

荒木:シンガポールのタクシーも、ひと昔は日本車、クラウンばっかりでしたけど、5〜10年前くらいから日本車なんて走ってないですもんね。ヒュンダイのタクシーが走っている。私もどちらかというと古いタイプの人間だったから、「日本はまだまだアジアではすごいんだ」なんて思って出ていきましたけども。
石田:今、どんどんオセロの駒がひっくり返されているのを感じています。車の話でいうと、最近までドバイではトヨタのカムリでした、ほとんどがトヨタ。それが、ついこの間行ったら、やっぱりヒュンダイに変わっている、いつの間にか。どんどんと塗り替えられているのを見て、まずいなと。

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.1 荒木隆

まず仕事を取りに行く韓国、準備に時間をかける日本
日本企業のやり方は今の時代にそぐわない

荒木:日本も今まで成長してきただけの底力があったのに、ここにきてどちらかというと、日本はダメで他の国は強いという状況になってきています。これは日本が劣化したのか、それとも周りが成長してきたのか、どちらなんでしょう。
石田:両方あると思います。僕がすごく衝撃的だったのが、韓国企業などは準備とか全然できてなくても「できる」って言っちゃうらしいんです。
例えば、アフリカ。アフリカにこれからダムを作るというのは、もうナンセンスなんです。地球環境に良くないし、お金もかかるし、事故も起きる。そこで、アフリカの山奥にスマート原子炉、小型で安心安全な原子炉を導入して、小さな村に電力を供給していこう。そういう市場があるんです。そのスマート原子炉、韓国の企業が提案をしに行ったんだそうです。「これだけのスマート原子炉をこれだけの村に何百個導入しましょう」と、アフリカのある政党に提案して。で、帰ってきてから部下の社員が社長に「うちの会社スマート原子炉なんて作れないですよね、どうするんですか?」と聞いたら、「そんなものは東芝に外注すればいい」と。つまり、韓国は仕事をまず取りに行く、取ってきた仕事を「できる人いますか」と手を挙げさせて、仕事を投げる。サムスンとかヒュンダイとか、そういうやり方なんだそうです。それに対して日本の企業はというと、スマート原子炉をアフリカの村に作ります、じゃあできるかどうかまずFS調査をしましょう、自分たちで作れるのか、メンテナンスできるのか、しっかり下準備してからやれるかどうか判断を出す。そこに半年かかるとしたら…。

荒木:もう遅いですよね。
石田:その半年間の間に、向こうは電力事情も通信事情も変わっちゃうんですよ。そういった、色んな事例を聞いてきました。で、そういった話を聞く中で、韓国企業や中国企業は自分たちのできる力が6割だとしても100%の力でプレゼンする。かたや日本企業は、これはいいところでも悪いところでもあるんですが、100%の準備をしてから「これでどうですか?」と売りに行く。そういう、準備をがっちり進めて行くというやり方が、今の時代にはそぐわないんじゃないかなと思います。

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.1 左:石田和靖 右:荒木隆

「走りながら考える」企業体質を持ち合わせるべき
海外のスピード感、決断力、文化を理解できる人材が必要

荒木:これからの時代に日本企業が生き残って行くための企業戦略、どのようにビジネスを展開いかなければいけないのかをお伺いできますか。
石田:ここまでお話したような事例が数多くあることを考えると、「走りながら考える」会社、準備が整ってからではなく、走りながら考えることができる企業体質を持ち合わせていかないといけないなと思います。そのために必要な「走りながら考える」人材って、やっぱり日本の社会の中で生きてきた人の中には、キラリと光る人材はいないと思うんです。そういう人材が外国人なのか留学生なのか、あるいは海外ボランティアだった人なのか、色々あると思うんですけども、海外のスピード感と決断力を理解して文化を理解して、ついていこうと食らいついていける人間。自ら旗を振って、「この国でこんな仕事が取れました。やりますか?やりませんか?」と言える。「準備できないから無理だよ」と言われたら、「じゃあ準備できなくてもどうやってやれるか、やり方を考えましょう」と言える。そういう人間、そういう部署を企業の中に作り上げていく、というのが1つ戦略として必要なんじゃないかなと思います。

荒木:日本の会社組織というのはほぼ中小零細なわけですが、中小零細であってもこれからの時代を生き残って行く方法はあるとお考えですか?
石田:あります。ありますが、やっぱり「走りながら考える」ということを企業の体質として作り上げていかないと、海外で戦うことはなかなか難しいと思います。日本国内で増収増益でやっていける会社は、それでいいと思うんですよ。ただ、そういった会社ばかりではなくて、縮小する日本マーケットだけでなく、周辺国あるいは新興国にマーケットを拡大していきたいって会社が恐らく多いと思うんですよ。そうなった時に、企業の体質として、戦略として「走りながら考える」っていうことができる、そういう組み立て方をした方がいいと思います。

荒木:「創業◯年」というのは日本では美徳のように言いますが、これからそれを守ったとしても、次の時代にそのまま続くかどうかというと、なかなか難しい。
石田:「創業100年」というのがブランド力としてものすごいのであれば、そのブランド力を海外にどう発信していくか、やり方はいろいろあると思うんです。古い体質の会社でも、古くても新しいもの、古くてもいいものもある会社がいっぱいありますから、それらを企業がもう1回ちゃんと考え直して。必要な人材をそこに入れて、世界を舞台にするという考え方。そういうものを組み立てて行く必要があると思います。

石田和靖 プロフィール

株式会社ザ・スリービー 代表取締役
越境会会長、WITV総合プロデューサー、香港政府観光局 香港経済観光大使、Halal news副編集長

会計事務所勤務の際、中東~東南アジアエリアの外国人経営者の法人を多く担当。 その後2003年に(株)ザ・スリービーを設立。年に十数回、香港・タイ・UAE など各国を訪問し、香港やドバイ、サウジアラビアの証券会社、政府系ファンドなどに太いパイプを持つ。

海外投資SNS「ワールドインベスターズ」や、世界経済・投資・ビジネスの動画サイト「ワールドインベスターズTV(WITV)」など、海外のビジネス・投資及び国際理解教育に関するメディアを企画・運営。

2013年には、世界に羽ばたく人たちのためのクロスボーダーコミュニティ「越境会」を発足、会長に就任。世界の真の情報や人脈、機会を共有する会をメンバーシップ制で運営。世界を駆け巡り、日本人のチャンスを探りながら、現在に至る。