【世界で戦う日本人に聞く】新興国ビジネス論vol.2 – グローバル展開で求められる人材

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.2 グローバル展開で求められる人材

各国を渡り歩き、まさに前線で戦う日本人経営者や起業家の皆さんに、TIP TOP JOBの荒木隆がお話を伺うインタビューシリーズ、「世界で戦う日本人に聞く」。
全4回に渡って「新興国ビジネス論」と題して、世界を股にかけて活躍する日本人経営者であり越境会代表の石田和靖さんにお話を伺います。
第2回となる今回のテーマは、「グローバル展開で求められる人材」。
現在企業はグローバル化を図り、様々な戦略を立てています。その中で求められるのはどのような人材なのか、今の日本人に足りないものは何なのか。海外での実体験を交えながら、徹底的に語り合いました。

新興国ビジネス論vol.2 – グローバル展開で求められる人材

目次

企業を魅了する海外マーケットの可能性
海外は日本のサービス・技術を求めている

荒木:今回は「グローバル展開で求められる人材」というテーマでお話をお伺いします。そもそも、グローバル展開には色々な意味があると思うのですけど、企業にとってのグローバル展開とはどういうことを言うのでしょうか。
石田:例えば、日本以外の国に向けて拠点を作るとか、販路を拡大するとか、新規事業を始めるとか。海外で新しい事業を始める為にチャレンジをすること、それがグローバル展開ですね。

荒木:「日本で大成功して力が余っているから外に出て行く」というのが、グローバル展開の一時前のイメージでしたが、最近はちょっと様子が違いますよね。
石田:色々あると思います。例えば、北海道のある古いお菓子メーカーは、海外展開する気がなかったのに、アブダビの王族がたまたまそのお菓子を食べて「これを是非アブダビで売りたい」と。それを受けて、その王族と組んでアブダビでお菓子を売り始めたら、とんでもない成功をした。そこで初めて、「中東ってすごいじゃないか、日本のスイーツがすごく売れる、面白いマーケットだ」と認識して、中東・アフリカ地域のマーケットを一気に開拓している。そんなお菓子メーカーがあります。

そのように、天から降って湧いた話で海外展開を始める企業もいれば、日本国内でマーケットが縮小してきているから何とか海外へ、とグローバル展開する会社もあります。あとは、荒木さんがおっしゃったように、日本では絶好調で、この絶好調の波をもっともっと海外へと、飛ぶ鳥を落とすような勢いで海外展開する会社もありますし。それぞれ、理由は色々だと思うんです。ただ、唯一共通項として言えるのは、海外マーケットの魅力・面白さ・可能性を感じて、海外に手を打っているということですね。

荒木:日本と比べると、圧倒的にお客さんが多いですもんね。
石田:他にも、成長の伸びしろと、お財布に入っているお金の額ですよ。国によっては財布にパンパンにお金を持っている消費者がいっぱいいる国があって、その人口は日本の2倍、3倍、4倍も。中国なんて何倍いるかも分からないくらい、とにかくたくさんいるんですね。そういう人たちの「日本の〇〇が欲しい」「日本のこういうサービスが受けたい」「日本のこういうアイデアや技術を是非導入したい」という声が、実はすごくたくさんある。向こうは、日本に対して、求めにきてくれているんですよ。なのに、そこで動かない理由はないでしょう。それが、グローバル展開の原点にあるものだと思います。

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.2 石田和靖

海外の肌感覚を持つ人材が企業に求められている
突破力、行動力、決断力、多様性を持つ人材を特攻隊長に

荒木:これまでグローバル展開をやってこなかった企業、これからやっていこうと考えている企業は、今まで日本で商売をやってきたわけですね。そこには従業員もいれば、工場に人もいる。でも、それだけではグローバル展開という、新しい展開は難しいのではないかと思います。
石田:難しいと思いますよ。やっぱり、情報力やノウハウ・経験や、会社としての度胸とか決断。それらがないと、行ったことのない国に対して何かを仕掛けるということは、なかなか難しいでしょう。

荒木:企業にとっても未知な世界ですよね。
石田:ある意味、ブラックホールですからね。見たことも聞いたこともない国で、「お菓子がこれだけ売れるからやってみない?」と言われても、怖いですよね。「テロとか戦争とか大丈夫なの?」とか、「お金ちゃんと入金されるの?」とか、いろんな心配事が次から次へと思い浮かんじゃって、身動き取れずに八方塞がりな会社もあるんじゃないでしょうか。

荒木:あえてその中でグローバル展開に打って出るとすると、企業はどういう人材を雇うもしくは頼る、つまり伴ってグローバル展開するべきだとお考えですか。
石田:まず大前提として言えるのが、いくらインターネットでどこかの国の情報を調べても、何も解決しないんです。じゃあ何が解決するのか、僕は人だと思います。突破力、多様性、決断力、そして行動力。この4つが伴ってる人材が一人でもいることによって、まず社風、会社の雰囲気が変わると思います。

「海外面白そうだな」「チャレンジしてみようかな」という気持ちになっても、社内で誰も情報を持っていないと、高いコンサルティング会社に頼んでお金を払って、訳のわからない分厚いレポートを読んで、「なるほど」と思って終わる。そういう会社ってきっと多いでしょう。そうじゃなくて、第1回でもお話したように、走りながら考える。調べることや調査することも必要だけど、調べながら動かなきゃいけないんですよ。なぜなら、新興国なんてあっという間に状況が変わってしまいますから、スピード感が早すぎて。だから、結局は走りながら考えられる、そういう人材を会社の中に置くことが大切だと思います。

荒木:肌感覚を持っている人が欲しいですよね。少なくとも行ったことがある人、しきたりを一通り分かっている人、言葉だけではなくそこでご飯を食べたことがある人。ガイドブックに「ここのお店がおいしい!」と書いてあっても、実際行ったら「えっ…」っていうところはいっぱいありますから。情報とリアルのズレも、海外ではやっぱりあると思いますし。
石田:そんなズレばっかりですよ。テレビ、新聞、インターネットでいろんな情報を集めたとしても、現実は違うっていう情報が結構出てきてますから。まずは、実際に見に行った方がいい。

荒木:そんな人材が来れば、ビジネスがちゃんとしている会社なら、グローバル展開に打って出る、戦う価値はありますか?
石田:ある、あります。

荒木:それは新興国であっても?
石田:そこはやっぱり、戦略は必要ですよ、どういうものを、どのようなマーケットに、どういうマーケティング戦略で売っていくのか。その特攻隊長は誰にするか。重要なのは、特攻隊長なんですよ。社長は行けない、部長や課長も分からないから行けない。となると、その部署や部門を引っ張っていける特攻隊長が必要。それにはどんな人材が必要かとなったら、突破力、行動力、決断力、多様性。この4つが伴っている人間性が絶対必要です。

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.2 荒木隆

グローバル化とは異文化を理解すること
多民族国家による多様性が中国の強み

石田:何故そう思うかというと、第1回でお話ししたドバイのある会社の話ですが、十人十色な訳ですよ。色んなアイディアがあって、可能性の塊。だから、意見が食い違って喧嘩もする。そこから生まれてくるアイディアは、一番とんがっているんですよね。どこにも真似のできないものすごいアイディアが生まれて、それが今世界一が最も集まっている都市を作っちゃっているんですよ。

恐らくシンガポールなんかも、そういう生き方をしていると思います。元々新興国で、日本よりも貧しかった国が、一気に日本を追い抜いて行った。そういう国の特徴って何かと言えば、多様性なんですよ。多様な文化、宗教、生活習慣があって、そういうものをお互いが理解して。グローバル展開をテーマに今話をしていますが、そもそもグローバル化って何なのかって言ったら、TOEICが何百点とかじゃないと思うんです。

荒木:それは語学力ですからね。
石田:グローバル化って何かと言えば、異文化を理解することですよ。インド人はこんな考えを持っている、ナイジェリア人はこんなことをやっている、イラク人はこうだああだとか、色んな考え方や習慣がある中で、文化や生活、背景、歴史を理解することが、グローバル化だと思います。「それがグローバル化なんだ」とストーンと落ちてくれば、この国でこんなことができるじゃないか、じゃあその為にこういう人間に特攻隊長をやらせようという判断ができる。

例えば、パプアニューギニアという国でプラントを作ろうという時に、日本の会社はほとんど作れず白旗を挙げてしまうんです。そこを飛び越えて中国が行ってるわけです、パプアニューギニアのインフラを全部塗りつぶしてやろうという意気込みで。パプアニューギニアという国に限って言えば、日本は全滅なんですよ。そこに新しく入っていく余地っていうのは、ほとんどなくなっているんです。これは中国の企業がまとまって、「ビジネスチャンスだ!」とみんなで行って。何もないじゃないかここには、と。「俺はタクシー会社をやる」「じゃあ俺は水の工場作る」「俺は天然ガスプラント作る」と、皆が手を挙げるんです。そういうのが塊になって、できないものでもできると言って、走りながら考えて少しずつ作っていって、気がついたらインフラが全部出来上がっちゃったという。

アフリカなんかもそうですよね。ダムも、道路も、鉄道も、港も、ほぼ全部中国企業がオセロの駒をひっくり返しちゃって。元々親日な大陸なのに、日本人のことが大好きなのに、日本人の入る余地がなくなるところまで塗りつぶされちゃってるわけです。そんな中国人の特徴というのが、異文化を理解する力、というものをすごく持っているところです。

荒木:どこにでもいますもんね。
石田:そう、そしてどこにでも馴染んじゃう。

以前面白かったのが、ナイジェリアに行ったときに、エチオピアのアディスアベバ空港で、乗り継ぎの間にビールを飲んでたんですよ。その時、急に隣に、中国人がくっついて座ってきたんですよ。「なんだ?」と思ったら「どこから来たんだ」と尋ねられて。「日本です」と答えて、仲良くなったんです。彼は、上海出身の中国人だというんですよ。何の商売をやってるのかと聞いたら、タイでサングラスのデザインをさせて、それを中国で作らせて、ドバイの会社を経由してアフリカのトウゴに輸出する事業をやっていると。

今の話の中で、エチオピア、ナイジェリア、トウゴ、ドバイ、上海、タイ。もうすでに6カ国出てきました。そんな商売を、その中国人の彼はやっている。これが中国人スタイルだなぁと思って。多分彼は、6つの国の文化、ビジネス背景、異文化を理解しているんです。まさにグローバル人材のもう…。

荒木:最高峰。
石田:そう、ど真ん中。そういう人材が、中国にはいっぱいいるんです。どこにでも活躍しています。

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.2 石田和靖

日本人は平和ボケしている
現代の日本に必要なのは突破力と多様性

荒木:日本人って、今の日本人はダメですけど、異文化を理解する力、そこの素地っていうのは持っていると思うんですよ。
石田:うん、持ってると思う。

荒木:それは何故かというと、戦国時代って戦をやるときに、「俺に先鋒を行かせてくれ」と、「武功を上げさせてくれ」という話がいっぱいあったと、ドラマなどでやってますよね。
石田:第二次世界大戦の零戦特攻隊だってそうですね。

荒木:本来日本人は持ってるはずなんですよね。それをフィールドないし教育で捻じ曲げられちゃって、お話に出たように「出来もしないものをできると言うな」という文化が出来上がったのかもしれません。そういうのは時代錯誤ですよね。
石田:そこを少しずつシフトしていかないと、世界で勝つってなかなか難しい。日本人のいいところは、元々そういうものを持っているところですよ。坂本龍馬や吉田松陰など、いろんな歴史上の人物を見ていくと、日本人は海外に行って何かガツンとやる力を持っているんです。遣唐使だってそうですよね。

そういうような、元々素地を持った民族だけど、恐らく教育とここ数年のメディアによって、悪い言葉でいうと平和ボケしてしまった。日本国内でやっていたら一番無難じゃないかと、無難な人生を選ぶ人たちが広がっていったんじゃないかなと思います。

荒木:キーワードは突破力ですね。
石田:思うんだけど、どこでもいいから新興国に一人で行ってみる。行ってみて、言葉の通じない、ガイドブックもないところで、どれだけ大変な反面どれだけ面白いか、そういう経験を若い人たちにしてもらいたいし、そういう経験をした人たちを企業に評価してもらいたいですね。そういう人材が、皆さんの会社の突破口を開いてくれると思います。新しい事業や新しい国での事業開拓とか、そういう人材をどんどん活用していったらいいと思いますし、活用すべきだと思います。

荒木:グローバル展開で求められる人材というのは、一番に突破力のある人材ですね。
石田:あとは、多様性ですね。

石田和靖 プロフィール

株式会社ザ・スリービー 代表取締役
越境会会長、WITV総合プロデューサー、香港政府観光局 香港経済観光大使、Halal news副編集長

会計事務所勤務の際、中東~東南アジアエリアの外国人経営者の法人を多く担当。 その後2003年に(株)ザ・スリービーを設立。年に十数回、香港・タイ・UAE など各国を訪問し、香港やドバイ、サウジアラビアの証券会社、政府系ファンドなどに太いパイプを持つ。

海外投資SNS「ワールドインベスターズ」や、世界経済・投資・ビジネスの動画サイト「ワールドインベスターズTV(WITV)」など、海外のビジネス・投資及び国際理解教育に関するメディアを企画・運営。

2013年には、世界に羽ばたく人たちのためのクロスボーダーコミュニティ「越境会」を発足、会長に就任。世界の真の情報や人脈、機会を共有する会をメンバーシップ制で運営。世界を駆け巡り、日本人のチャンスを探りながら、現在に至る。