【世界で戦う日本人に聞く】新興国ビジネス論vol.3 – 既存企業では見抜けない「海外留学経験者の底力」

世界で戦う日本人に聞く 新興国ビジネス論vol.3 既存企業では見抜けない「海外留学経験者の底力」

各国を渡り歩き、まさに前線で戦う日本人経営者や起業家の皆さんに、TIP TOP JOBの荒木隆がお話を伺うインタビューシリーズ、「世界で戦う日本人に聞く」。
全4回に渡って「新興国ビジネス論」と題して、世界を股にかけて活躍する日本人経営者であり越境会代表の石田和靖さんにお話を伺います。
第3回のテーマは「既存企業では見抜けない海外留学経験者の底力」。
日本に帰ってきた留学経験者が、いざ日本で働こうとするとその経験を活かしにくいという現実。その原因を、国内外のエピソードを交えながら探っていきます。
留学経験を経て身につけたスキルをもって、留学経験者はどこに向かうべきか、石田さんの言葉の中に1つの答えがあります。

新興国ビジネス論vol.3 – 既存企業では見抜けない海外留学経験者の底力

目次

留学経験者のポテンシャルは多様性
リーダーシップ、人を教育する力も備えている

荒木:私は海外留学エージェントをやっていまして、海外留学を目指す方や留学を経験した方の特性というのはある程度分かっているんですけれど。
石田:ある程度というより、いっぱい見てらっしゃいますよね。

荒木:留学から帰ってこられた方々もたくさんいて、その人たちがいざ日本で働くというときに、あまり生き生きされていない、またはその力を発揮できていないということをよく聞きます。海外をよく経験されている石田さんから見て、海外留学経験のある日本人の底力、ポテンシャルというものをお伺いしたいです。
石田:まず言えるのは、彼らの底力は多様性ですね。日本とは全く違う環境、日本の非常識が海外の常識であったり、その逆であったりする、全く違う環境の中で揉まれていると思うんですよ。海外で生活して、日本では通用しない海外の非常識を経験される中で、色々な文化に触れて理解しながら過ごしてきたと思うんですね。そんな彼らは、多様性を持っていると思いますし、いろんな考え方を次に活かす力を持っています。

あともう一つ、実際に海外留学生に会ってみて、リーダーシップを発揮できてると思ったんですよ。例えば、海外の大学には外国人がやっている書道部とか空手部、柔道部、茶道部などの部活動があって。そういった日本の文化を学びたいという人が集まるところで、語学留学というだけで大学に来ている日本人留学生が、リーダーシップを発揮しているということがあるんです。アフリカのとある大学では書道部があって、日本人留学生が書道を教えていたり、動画を紹介してこういう風にやるんだよと。人を引っ張っていく力、リーダーシップとか、人に教育する力っていうのが備わっているというのは、海外留学生の意外な一面でしたね。

荒木:日本の教育の指針にはあまりありませんが、海外では中学校・高校においても教えるべきものの中に、リーダーシップはしっかりとあるんです。
石田:カリキュラムの中に、それがあるんですね。

優秀な人材よりも「組織の歯車」を求める企業体質
イエスマンを求める企業はAI時代に対応できない

荒木:だから、成績が良ければいい生徒ではなく、リーダーシップや協調性を踏まえて学ぶということが、留学エージェントから見ても他の生徒との決定的な違いと見ています。この留学生の底力を、どうして日本の企業は見抜けないんでしょうか。
石田:これまでの日本の企業にとっては、右へ倣えで組織の歯車として動ける人間が良い人材だったと思うんです。これまではそれでよかった。高度経済成長の中で、一億人全体が豊かになっていこうという時代には、大きな会社があってその中で組織の歯車として働けるような教育をしていけば、それで人材活用は済んでいたと思うんですよ。

でも今は、少子高齢化で経済が縮小していく、景気の良し悪しで大企業さえも安泰じゃなくなってきた時代の中で、一人ひとりが個の力を発揮できるような時代になったと思うんです。そんな時代になっているのに、昔ながらの体質を持ち続けているから時代に対応できない、そんな会社が多いんじゃないかなと思うんですよね。これまで同様に、うちの会社の歯車として人材を入れていこう、と思っているんでしょう。そうなってくると、留学生はそこに馴染まないんじゃないかと思うんです。リーダーシップはある、多様性はある、行動力と決断力もある。歯車になってほしい会社からすれば、そんな人には来てほしくないわけですよ。

荒木:一番いらないタイプですよね。
石田:上司からしてみれば、全部「イエス」と言ってくれるイエスマンを雇いたいわけですよ。例えば、新しいことを提案してくる人に対して「余計なことをやらないでくれ、安泰に定年退職させてくれ」と、腹の中で思っている部長課長クラスはいっぱいいると思うんですよ、大企業には。そういう会社は、留学生を雇う必要性はないどころか、それだけの力を持っているということすら見抜けないと思うんですよ。なぜなら、企業の歯車として雇うことだけをずっと考えているから。その企業の体質から変わっていってもらわないと、リーダーシップや多様性、行動力、決断力を備えた人材が日本で活躍できるようになるまでには、なかなか時間がかかるんじゃないんですかね。

荒木:でも、今のこの時代、そういう人材は求められてきますよね。
石田:求められますね。歯車として働いている人が何人もいる会社って、この時代ではナンセンスじゃないですか。新しい時代への変化がどんどん押し寄せてくる中で、新規事業をこれまでの何倍も立ち上げていかければいけない時代に来てると思うんですよ。その中で、アイデアを出す人間はいない、引っ張っていく人間はいない、スピード感を持って決断力、行動力を持ち合わせている人材もいない。いる人材は上司の指示通りに動く歯車の一員でしかない、となったら…。

歯車もAIに取って代わる時代なんですよ、ルールがあって、その通りにインプットしアウトプットするのは、これから全部AIの仕事になります。企業が人材を歯車として動かしているのであれば、それは全てAIで回せてしまうんですよ。世界はもう、これからそういう人材は求めていない。そうなると、求められる人材、人間がやるべき仕事、できなければいけない仕事というのは、AIが行うような単なる計算では太刀打ちできないようなアイディアや経験をアウトプットする、形にしていくということじゃないでしょうか。

海外留学生を採用したい空気は出て来ている
日本を本当に理解している人は企業にとっても心強い

荒木:海外留学経験者の底力が求められているのに、日本の企業はまだ見抜けていない状況、ということですよね。
石田:残念ながら、そういう状況ですね。でも、その風潮は少しずつ変わっているんじゃないかと思います。身近なところで言うと、副業禁止だった会社が副業OKになっていたりしますよね。それは、会社がいつまでも安泰ではないから、自分の収入のために副業をできるのであればやりなさいと。その中で生まれたアイデアを買収する準備をしている企業もあったりと、ちょっとずつだけど変わってきているんじゃないでしょうか。だんだんと、海外留学組を採用したいという空気感が出てきている気はします。多様性とリーダーシップ、行動力と決断力。これらを持ち合わせている学生がどこにいるかというと、海外留学生の中にいると思うんですよ。彼らは、日本の良さを普通の日本人の何倍も分かっているわけですよね。

良い例を挙げると、サッカーの中田英寿や本田圭佑、野球のイチローら海外で活躍したスポーツ選手が皆言うのが、海外から帰ってきて、日本は素晴らしいと。中田英寿などは、日本酒を世界に広めようと動き始めたりとか。世界を回ったからこそ日本の底力を感じ、日本の新事業を始めて、「こういうものを売りに行ったらいいんじゃないか」という風にアイディアを形にして、アウトプットされていますね。だから、日本のベースを本当に理解している人というのは、身近にいる日本人よりも、海外にいって1年、2年と何かしら泥沼の経験をしてきた人。「日本ってやっぱりいいな」というわけですよ。そういう人が、企業にとっては心強いじゃないですか。

一番手を行き現代のインフラを活用すれば成長できる
留学経験を認めてくれる企業は世界中にある

荒木:今までみたいに、日本式にお利巧ちゃんで生きなくても別にいいわけです。自分の個性を企業に理解してもらいにくい、でも自信を持ってもいいんですよね。
石田:うん、自信を持った方がいいですね。一つ面白い例を挙げると、ドバイに上場しているヨルダンの会社で、アラメックスという会社があるんですよ。アラメックスは物流会社なんですね、他の会社が運べないところにものを運ぶっていうのが、アラメックスのコンセプトなんですよ。アフリカのベナン山奥とか、スーダンの山奥とか、他の国際物流会社では運べないところに「うちはその地域に物を運べますよ」と言ってるわけなんです。すると何が起こるかというと、スーダンの政府と有利に交渉をできるんです。医薬品や食料に困っている村があるとすると、そういうところに我々の会社は必ず◯日間でものをお届けするから、そのためにこれだけ税金を安くしてくれと。優遇策を出してくれと。そうやって、海外の政府を味方につけて、自分たちで大きくしていった会社なんですよね。

ここの創業者は、ファディ・ガンドゥールっていうヨルダン人なんです。彼はベンチャー支援をすごく頑張っている人で、その人は「一番手はカキの身を手にする、二番手はカキの殻を手にする」と、アメリカの鉄鋼業会の実業家、アンドリュー・カーネギーと同じようなことを言ってるんです。まず、一番手を行け、と。誰もできない尖がった所に入っていけ、と。あとは、今あるインターネットというインフラを活用して事業を組み立てていけば、大きく成長できるよ、と言うんです。

じゃあ尖がったものとは何なのかというと、まさに海外留学組なんですよ。日本人は尖ってないですよね。尖がった人材が、新しいものを生み出すわけなんです。東南アジアとかアフリカにいって、とんでもない経験、貴重な経験をして、帰ってきた人間。それをどう活かすかとなった時に、日本の企業が認めてくれなくても、世界には認めてくれる企業がいっぱいあります。言ってしまえば、日本が好きだからといって、日本にこだわる必要がないわけです。自分がやりたい仕事とか、やりたい方向とかを認めてくれる会社に行けば、その人は花開くと思うし、その中で日本の企業が選択肢の中に入っているのだとすれば、それもいいんじゃないかなと思います。

荒木:色々とお話しを伺いましたが、端的にまとめると、日本の既存企業では見抜けない海外留学経験者というのは、尖がった人材ということですね。
石田:そうですね、そういう人材が日本企業には必要だということです。

石田和靖 プロフィール

株式会社ザ・スリービー 代表取締役
越境会会長、WITV総合プロデューサー、香港政府観光局 香港経済観光大使、Halal news副編集長

会計事務所勤務の際、中東~東南アジアエリアの外国人経営者の法人を多く担当。 その後2003年に(株)ザ・スリービーを設立。年に十数回、香港・タイ・UAE など各国を訪問し、香港やドバイ、サウジアラビアの証券会社、政府系ファンドなどに太いパイプを持つ。

海外投資SNS「ワールドインベスターズ」や、世界経済・投資・ビジネスの動画サイト「ワールドインベスターズTV(WITV)」など、海外のビジネス・投資及び国際理解教育に関するメディアを企画・運営。

2013年には、世界に羽ばたく人たちのためのクロスボーダーコミュニティ「越境会」を発足、会長に就任。世界の真の情報や人脈、機会を共有する会をメンバーシップ制で運営。世界を駆け巡り、日本人のチャンスを探りながら、現在に至る。